静音タクタイルスイッチを比較してみました

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気がつけばリニアからタクタイルに乗り換えて1年が経っていました。
これまでずっと Outemu Silent Lemon V3 を使っていましたが、ほかの静音タクタイルも試してみたくなり、いくつか選んで比べてみることにしました。

今回試したスイッチは以下の 7 つです。

  • Outemu Tom Silent Tactile(Outemu Tom)
  • Outemu Cream Yellow Pro(Outemu Cream)
  • Outemu Silent Lemon V3(Outemu Lemon)
  • KTT ZenCha Silent Tactile(KTT ZenCha)
  • TTC Silent Bluish White V2(TTC Bluish)
  • Kailh Deep Sea Silent Pro Box Whale(Kailh Whale)
  • DUROCK Silent T1 Shrimp(DUROCK Shrimp)

比較内容は「どれだけ耳障りな音が少ないか」 を基準に、静音性を3つの観点から採点してみました。

① バンプ静音性

タクタイルスイッチには、押し下げ途中に「バンプ」と呼ばれる引っかかりがあります。
この部分がスムーズに通過でき、擦れ音や金属リーフのカチャッといったノイズが少ないほど高得点 です。

② ボトムアウト静音性(押し切ったときの音)

キーを底まで押した際の衝撃音の大きさと伝わり方を評価しました。強く響かず、耳に響く音が少なく、静かに止まるスイッチほど高得点です。

③ トップアウト静音性(キーが戻るときの音)

ボトムアウトと同様の考え方で、キーを離したときの戻り音が静かであれば高得点です。

目次

結果

採点は各項目について 1〜5 の5段階評価で、必ずいずれかの数値を入れるようにしています。

Outemu
Tom
Outemu CreamOutemu
Lemon
KTT
ZenCha
TTC
Bluish
Kailh
Whale
DUROCK
Shrimp
バンプ静音性3432513
ボトムアウト静音性4453312
トップアウト静音性4453312
合計(満点15)10121381137
タクタイルバンプ
(段差感)
2312455
値段5554321

結果は Outemu の3製品と TTC Bluish が静音スイッチとして安心して使用できるレベルでした。
その中でも一番静かだったのが Outemu Lemon で、押しても離してもほとんど音が立たず、今回の比較ではダントツの静音っぷりでした。

そもそも静音スイッチはどのようにして音を抑えているのか?という点ですが、今回比較した製品はいずれも、スイッチ内部にシリコンなどのクッション(ダンパー)を備えることで、打鍵時の衝撃音を抑えています。

Outemu の3製品は、ステムの両サイドにダンパーがあり、ボトムアウト・トップアウト時にそこが接触する構造になっています。このダンパーが少し柔らかめになっているため、衝撃をしっかり吸収してくれて、静音性が特に高いのだと思いました。その代わり、ボトムアウト時にはわずかに “ムニュッ” とした感触 があり、ここは好みが分かれるかもしれません。

KTT ZenCha も Outemu と同じようにステム側にダンパーがありますが、こちらは少し硬めなのか、ムニュッとした感触が控えめに感じました。そのためかそれなりの静音性という感じです。

TTC Bluish は、ステムとハウジング底面の両方にダンパーが付いている独自の静音構造で、高い静音性だと思います。

Kailh Whale はバンプ時に独特の音があり、静音スイッチとしての使用は難しそうでした。「静音タクタイル」というより別のカテゴリとして考えたほうがしっくりくる印象です。

DUROCK Shrimp も静音性はそれなりにありますが、オフィスで使う場合は少し音が気になるかもしれません。

ざっくりした静音性の話はここまでで、ここから先は 各スイッチについての感想を書いています。打鍵音や静音性は、キーボード本体やケース、キーキャップ、個体差によって変わることがあります。今回の内容は、あくまで私の環境で試したときの感想です。

スイッチごとに静音確認の動画を撮りました。1回目は底打ちしない弱めの打鍵、2回目は底打ちする強めの打鍵にしています。比較用として、普通の音が出るリニアスイッチを使っているので、静音スイッチとの違いを見る際の基準にしてください。

キャップが高音を吸収しにくいようで全体的に少し高めの音がでるため音量に注意してください。

Outemu Tom Silent Tactile

タクタイルフォース45 ± 10gf
タクタイルトラベル0.7mm
アクチュエーションフォース50 ± 10gf
アクチュエーショントラベル2.2 ± 0.6mm
ボトムアウトフォース65gf
トータルトラベル3.3mm
ステムPOM
ハウジング トップ/ボトムPC / Nylon
スプリング22mm
ピン数3
価格約25円 ( 1/90pcs )

Outemu Tom は、タクタイルフォースに向かって力が緩やかに立ち上がるフォースカーブになっており、押し始めからバンプまでの変化が自然で扱いやすいスイッチです。バンプは強すぎず弱すぎずで、長時間使っても疲れにくいように調整されている印象があります。

裸状態で耳に近づけてテストしたところ、バンプ時にわずかな金属音や擦れる音が聞こえる個体がありましたが、実際のタイピングでは気になりませんでした。

3ピンで静音タクタイルを探している人にはオススメな製品だと思います。

www.switchesdb.com

Outemu Cream Yellow Pro

タクタイルフォース45 ± 10gf
タクタイルトラベル0.7mm
アクチュエーションフォース50 ± 10gf
アクチュエーショントラベル2.0 ± 0.6mm
ボトムアウトフォース65gf
トータルトラベル3.3mm
ステムPOM
ハウジング トップ/ボトムPA66 / PA66
スプリング13.2mm
ピン数5
価格約24円 ( 1/90pcs )

スペックは Tom とほぼ同じですが、バンプ時の音は Tom よりも少しだけ静かに感じられました。また、タクタイルフォースに向けた力の立ち上がりが少しだけ重く感じました。

初めてのタクタイルにするならTomよりオススメしたいスイッチです。

Outemu Silent Lemon V3

タクタイルフォース50 ± 10gf
タクタイルトラベル( 0.8mm ? )
アクチュエーションフォース35 ± 10gf
アクチュエーショントラベル1.80 ± 0.6mm
ボトムアウトフォース50gf
トータルトラベル3.3mm
ステムPOM
ハウジング トップ/ボトムPA66 / PA66
スプリング21mm
ピン数5
価格約22円 ( 1/90pcs )

今回最も静音だったスイッチです。

特徴としては、ストローク前半がとても軽く、ほとんど遊びのようにスッと下がり、途中から少し重たくなる“山”が現れる点です。ただ、この山自体は小さいため、指で感じるバンプは控えめで、スムーズに押し下げられるタクタイルになっています。

公式のフォースカーブでは急な山になっていますが、実際はもっと緩やかだと思います。

www.switchesdb.com

軽いタッチで滑らかに押せて、バンプもほんのり感じる程度なので、手が疲れにくく長時間の作業にも使いやすいスイッチだと思います。

KTT ZenCha Silent Tactile

タクタイルフォース50 ± 5gf
タクタイルトラベル( 0.8mm ? )
アクチュエーションフォース40 ± 5gf
アクチュエーショントラベル1.9 ± 0.5mm
ボトムアウトフォース( 60gf ? )
トータルトラベル4.0 - 0.5mm
ステムPOM + TPE
ハウジング トップ/ボトムPC / PA66
スプリング22mm
ピン数5
価格約35円 ( 1/90pcs )

フォースカーブは見つけられませんでしたが、実際に触った印象では Outemu Lemon を少し重くして、バンプの引っかかりを少し強めたような感触です。静音性は Outemu 系と比べると確かに劣りますが、うるさいとまでは感じませんでした。日常的な使用で気になるレベルではないと思いますが、キーを弾くような打ち方だとうるさく感じるかもしれません。

カタカタとした軽い音が楽しめるのが特徴で、静かすぎないタクタイルが好きな方には心地よく感じられると思います。

気になる点としては、リーフから金属音が聞こえることでしょうか。頻繁ではありませんが、タクタイルノイズに敏感な方は気になるかもしれません。

TTC Silent Bluish White V2

タクタイルフォース58 ± 5gf
タクタイルトラベル0.5 ± 0.4mm
アクチュエーションフォース42 ± 10gf
アクチュエーショントラベル2.0 ± 0.4mm
ボトムアウトフォース( 50gf ? )
トータルトラベル3.5 ± 0.4mm
ステムPOM
ハウジング トップ/ボトムPC / PA66
スプリングDouble ( 22mm ? )
ピン数3
価格約51円 ( 1/90pcs )

TTC Bluish は、静音性とタクタイル感のバランスがうまく取れたスイッチだと感じました。ステム側とハウジング底面に静音用のダンパーが搭載されていて、底打ちやキー戻りの衝撃が、コトッ、トコッといった少し硬めの低い音がでます。※ 下の動画では高音がでてしまって伝わりにくいです。

押し心地は最も滑らかで、バンプは確かな段差を感じることができますが、長時間の使用は指が疲れてくる重さです。ある程度の静音性とタクタイル特有の引っかかり、さらに底打ち感を両立させたい人にとても合うスイッチだと思います。

個人的に次はこのスイッチにしたいですね。

www.switchesdb.com

Kailh Deep Sea Silent Pro Box Whale

タクタイルフォース60 ± 10gf
タクタイルトラベル( 0.5mm ? )
アクチュエーションフォース40 ± 10 gf
アクチュエーショントラベル2.0 ± 0.4mm
ボトムアウトフォース45gf
トータルトラベル3.6 ± 0.4 mm
ステムClear plastic
ハウジング トップ/ボトムPC / Nylon
スプリング( 20mm ? )
ピン数3
価格約60円 (1/35pcs)
約47円 (1/90pcs)

今回比べた中では、Kailh Whale が一番うるさいスイッチでした。バンプ時のカチカチという音が特徴的で、静音タクタイルというより、軽いクリッキーを思わせるような印象があります。

公式サイトに載っている構造図を見ると非常に手の込んだ構造になっていて、作りはしっかりしていると思います。ただ、静音性という観点では他のスイッチと比べて大きく劣り、静音よりもタクタイルの強さや打鍵感を楽しむためのスイッチだと思います。

DUROCK Silent T1 Shrimp

タクタイルフォース( 60gf ? )
タクタイルトラベル( 0.4mm ? )
アクチュエーションフォース52gf
アクチュエーショントラベル2.0mm
ボトムアウトフォース67gf
トータルトラベル3.8mm
ステムPOM
ハウジング トップ/ボトムPolycarbonate / Polymer nylon
スプリング( 15mm ? )
ピン数5
価格約93円 (1/90pcs)

DUROCK Silent T1 Shrimp の静音性はそれなりといった印象で、オフィスなど静かな環境では少し音が目立つと思います。

タクタイル感はかなり強めで、今回のスイッチの中でも一番はっきりとした段差を感じました。押しごたえがしっかりあるので、タクタイル特有の引っかかりを楽しみたい人には向いていますが、逆に長時間のタイピングでは指に負担がかかりやすいはずです。

バンプ時に結構大きめの擦れる音が聞こえます。他の静音タクタイルと比べると、全体としての静かさは一歩劣るという印象でした。

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